今日もお茶がうまし〜まいにちのきろく〜

歴史とか日本文化とか散歩とかデザインとかが好きな人妻が日常を見たらこうなる。Everyday is a special day!

高畑勲作品について思うところ

平成狸合戦ぽんぽこ」が好きな理由。
子どもの頃に私の住んでいた家の裏にヤブがあって、野生のタヌキが生息していたからというのがまずひとつ。
給食の食パンを持ち帰っては、タヌキの親子にあげていたっけ。
ちょうどそんな小学生時代を送っていたときにこのアニメ映画が作られたので、自然と好きな映画になったのだけど、数年後に裏のヤブも宅地開発され、タヌキたちはどこかにいってしまった。
そんな結末すら映画にそっくりだ。

この映画を好きではないという声を周りから聞く。
まあ確かに、タヌキたちは可愛らしいわけではないし、むしろ妖怪的で若干気持ち悪いと感じる人がいるのは納得する。
ストーリーも非現実的な要素は含みつつ、結局タヌキたちの住処は無くなってしまうというどうしようもない現実を、あまり気持ち良く感じないというのも分からないではない。現実はハッピーエンドではないものだ。

私がこの映画がさらに好きになったのは大学生の頃。
タヌキたちが化けるシーンに、ふんだんに宮沢賢治の要素を見つけたことに感動を覚えた。

双子の星
星めぐりの歌のメロディ
風の又三郎の風の音(どっどど どどうど…)
など

賢治の作品のファンタジーが盛り込まれていることが分かり、さらに作品の深みを感じた。

さらに、仏教的な知識を得てからは、阿弥陀来迎のシーンをアニメーションで表現したことに非常に感動を覚えた。

この作品1つに、あらゆる日本的な要素が詰まっていて、ストーリーを追う以上の楽しみがあることに気づき、高畑勲の世界の広さに圧倒された。
たとえ見るものに知識がないとしても、アニメーション作品を通じて日本のアイデンティティ的なものに、自然と触れることができる。
なかなか無二な作品作りだと思う。


高畑氏の遺作である「かぐや姫の物語」では、かぐや姫が月に帰るクライマックスでまた阿弥陀来迎のモチーフが使われている。
ぽんぽこよりもより緻密に描かれた美しい来迎は、別れを至福の時間に変えるような印象的なシーンだった。

私はこの作品は一度しか見ていないので、なぜ死を連想させる来迎を使ったか、よく熟考したいと考えている。
そして、今やっている高畑勲展もぜひ足を運んでみたいと思っている。